キッチンと洗面台の壁に、何枚か違うタイルがある。
最初に目を引くのは青いモチーフではなく、白の質が違うことだ。まわりの現代タイルより少し黄みがかって、重みがある。光を吸い込むような、不透明な白。これが蚤の市で見つけたアンティークのデルフトタイルで、家を建てるとき意図的に壁に混ぜた。
模倣が生んだ、オリジナルの白
17世紀、オランダ東インド会社(VOC)は中国から大量の青花磁器を輸入していた。白地に青の文様はヨーロッパで熱狂的に迎えられたが、17世紀初頭に中国からの供給が途絶える。需要だけが残った。
その空白を埋めようとしたデルフトの職人たちは、錫酸化物を混ぜた釉薬(ティングレーズ)で器の表面を覆い、コバルトブルーで文様を描いた。磁器に近づけようとしたが、同じものにはならなかった。中国磁器の白は半透明で、光を通すような薄さを持つ。錫釉の白は不透明だ。光を反射せず、表面に深みが生まれる。こっくりとした、重みのある白。
模倣の限界が、オリジナルの質感を生んだ。

Photo: Donald Trung / CC BY-SA 4.0
手仕事の痕跡が積み重なる
同じ時代、同じデルフトで暮らしていた画家がいる。フェルメールの室内画に目を凝らすと、壁の下部にこうしたタイルが静かに並んでいる。彼の絵のなかで、タイルは装飾品ではなく、ただの日常だった。
アンティークのタイルを手に取ると、その白はさらに複雑さを増している。表面には貫入(釉薬のひび割れ)、気泡の痕、絵付けの筆の勢い。一枚ずつわずかに違うモチーフ。使われた何百年かが、白の上に静かに堆積している。量産品には出ない、時間の手触りだ。
不揃いのよさ
ふとした思いつきから、白いタイルの壁に蚤の市で見つけたデルフトタイルを混ぜることにした。現代のタイルとはサイズが微妙に合わない。白の色味も質感も、明らかに違う。でも、そこがよかった。
揃わないものを揃えないまま、少しずらして貼った。毎朝キッチンに立つと、まわりの白との差がうっすら目に入る。段差、色の重み、微妙なずれ──それがちょうどいいノイズになっている。

古いものを、古いものとして飾るのではなく、新しい文脈に混ぜる。そこだけ白の時間が違うような感覚をつくるために。揃わないことが、むしろよい。
